宮本京介 コンサルタント

日本ライフスタイル医学会

会員インタビュー

宮本京介先生
The Queen’s Medical Center 内科医(ホノルル)

LM と出会ったきっかけ、また何故 LM が大切だと考えましたか?

LM と出会ったきっかけは、自分の体調不良です!40 歳を 超えたあたりから明らかに 体力が低下し、風邪を何度も引くようになりました。食事や運動を見直して体調が良く なったのですが、科学的に根拠のある食事や運動法を探したところ、特に食事はあまり に 根拠のない 話が多く、きちんと勉強したいと思うようになりました。そんな折にネ ットで情報を集めていたところ、Harvard の主催する Lifestyle Medicine の勉強会がある ことを 知り、2018 年 12 月に参加しました。その時に聞いた話はあまりに衝撃的で、 今でも鮮明に覚えています。自分が内科医として治療してきた多くの慢性疾患が、クス リ以外の方法で予防でき、さらにはリバースまでできる可能性がある、と言うのは考え ていませんでした。アメリカではよく慢性疾患には lifestyle modification が第一選択で あると習いますが、実際にそこに時間を割いて指導する医師はいません。これは、お金 にならないからです。でも、よく考えれば、 疾患のアップストリームに働きかければ、 その後の医療費を大幅に削減できるため、これはゲームチェンジャーになるという確信 を得ました。その勉強会で、American College of Lifestyle Medicine (ACLM)と認定試験 (Board Certification)の存在を知り、2019 年 10 月に認定を得ることを目的に勉強を 始めました。LM は全ての年齢層にアプローチできますし、longevity に最も 貢献できま す。今までは病気の人を必死で治療していましたが、再発も多く、いたちごっこだとう すうす感じていました。そして、日本の沖縄がかつてブルーゾーンであったことを考え ても、日本の伝統的な文化スタイルを少し改良するだけで、寿命ではなく健康寿命を延 ばせる可能性を感じました。

LM を推奨する中で、Challenge がありましたら教えてください。

LM を推奨し、情報発信するのに考えられる障壁は、 「時間の割にお金にならないので 続けにくい」「製薬会社が競合」「伝統的な投薬治療を望む医師の潜在的な反発」など が挙げられます。LM の守備範囲は広く、産業と強く結びついている部分があります。 つまり、食品会社などの抵抗を受ける可能性があります。また、エビデンスレベルの高 いデータがまだまだ少ないので、結論が二転三転することがあります。質の高くないデ ータが大量に出てきており、情報の選別する能力を試されます。 また、研究に関してい うと、各領域の専門学会ではそれなりに盛り上がっているようですが、LM としてそれ らの学会の協力を得られてはいないので、学術的には まだまだ未熟だと思います。これ から洗練されていくと思いますが、その分突っ込みどころも多く、障壁は多いです。も ちろん、逆にいえばやりがいがありますし、医療従事者ならおそらく誰もが LM の重要 性を実感していると思いますので、チャレンジできるのはいい環境だと思います。

LM の6つのテーマ(運動、食事、ストレス、禁煙アルコール減、睡眠、コミュニティ)の中で、自分で強いと思う分野、また弱いと思う分野を教えてください。また ご自分で弱いと思う分野は、どのように勉強しているか教えてください。

満遍なく勉強してきていますが、逆に言うと、特に強い分野がありません。最も興味の ある分野は栄養と運動です。満遍なく勉強したり、全体像をつかむのには Board Review がよかったです。今重点的に勉強したいと思っているのは、エビデンスや研究手法もか なり確立してきた睡眠です。

LM が日本に浸透した時に、どのようなメリットがあるのか、実現した時の未来像をお聞かせください。

LM が日本に浸透し、 医学部で栄養や運動などの LM のコア教育が組み込まれるのが一 つの目標です。医師の役割をシフトし、ヘルスコーチとしての役割を担うのもいいと思 います。病院を、「病気の人を診る場所」から、「健康な人の健康を維持する場所」と しての機能を加え、健康に対する長期投資という視点を根付かせたいです。そして最終 的には、日本人にあった日本の文化の新旧のいいところを和合したライフスタイルを提 案します。こうして日本の良い文化を保ち、改良し、健康で幸せな人を増やすのが大き な目標です。その中で、健康的なライフスタイルを維持できる環境やシステム作りを他 の業界と共同で行い、さまざまな雇用を創出します。きちんとした、 健全なビジネスを 生み出すことは、 システムのサステイナビリティに重要だと思います。人々が健康的 な ライフスタイルを求め、その結果産業が健全化し、みんなが健康かつ幸せになる、そ んな社会が自分の目指す未来の日本です。

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この記事を書いた人

Japanese Society of Lifestyle Medicine (JSLM) は、⽶国の学会に集まった⽇本のNCDの改善に関⼼のある医療従 事者により2015年より準備が始まり、2017年に組織されました。JSLMは 医師、公衆衛⽣専⾨家、医療リサーチャー、医療政策に関わる専⾨家、医 療教育者、看護師、栄養⼠、ソーシャルワーカー、理学療法⼠、臨床⼼理 ⼠、ヘルスコーチ、⻭科医、薬剤師等、幅広い分野の専⾨家で組織されています。

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