白井珠美(Tamami Shirai) 議長

日本ライフスタイル医学会

会員インタビュー

白井珠美(Tamami Shirai)先生
University California San Diego, Radiology, School of Medicine 博士研究員 (カリフォルニア)

LM と出会ったきっかけ、また何故 LM が大切だと考えましたか?

日米の心疾患についてLMをテーマに博士論文を執筆中に、American College of Lifestyle Medicine という学会があることを、ソーシャルメディアを通じて知り、2015年に学会に参加したのが最初のきっかけです。President 自らがソーシャルメディアでコンタクトしてくださり、とても驚いたと同時に、その熱心さに感銘を受けました。当時、慢性 疾患管理、Lifestyle Modification を中心に研究しており、心肺リハビリセンターで、週 1 回メディテーションのクラスを担当していましたので、患者様がいかに運動、食事、ストレスマネジメント、睡眠などの必要な情報を集めるのに苦労しているのかを知っていましたし、リハビリセンター内での教育にもばらつきがあるのに気がついていましたので、必要な情報を1カ所で集約して学べる場所に出会い、勉強意欲が上がったのを覚えています。私の家族も大きな手術を経ていますので、運動を中心としたリハビリがとても有効であること、継続した運動、適切な食事や体重維持、ストレスマネジメントや 睡眠が重要であるのにも関わらず、それをサポートする機能が点在してしまっているこ とを感じていたため、LM はまさにその役割を担える分野だと思いました。

薬や手術で治療をしても、心疾患の患者様は、鬱や不安症が高まると予後が急速に悪化します。また、肺に疾患を抱える患者様は、Helplessness という感情と向き合っていくことに苦痛を感じていくことがわかっています。また移植を待つ患者様の心理的なサポ ートも、サポートグループだけで充分ではないことも感じていました。さらに、リハビリ内での人間関係や政治的な思考などでも、米国の方々はストレスをお持ちです。一方、臨床心理士、栄養士は米国でもリハビリセンターに常駐しておらず、少し距離があ ります。心肺リハビリセンターは、運動を目的に患者様がやってきますので、メディテーションのクラスの中でストレスマネジメントのサポートを行い、グループワークの中で、運動の継続や望ましい食事に変更していくための Lifestyle Modification を実現するのに理想的な場所だと感じ、メディテーションのクラスの中に、LM の要素を加えて実施しています。

LM を推奨する中で、Challenge がありましたら教えてください。

Lifestyle Modification の必要性を理解されていらっしゃる方しか私のクラスにはいらっしゃいませんので、心疾患、肺疾患を持つ患者様、全員に対応できているわけではないのが現実です(とりこぼしている人数は大きいかもしれません)。LM は守備範囲が広いので、専門性を追求する医学・学術の従来の Specialist 志向とは逆行しており、全ての LM の分野をカバーするには勉強量が多く大変です。また、栄養士でも臨床心理士でも医師でもない博士研究員という立場の私の活動は、既存の業務の区分を超えた活動になり、進んでいる米国でも、仕事にはまだなりにくい現状があります。異なる分野の研究を他職種の方々としますので、大学の所属も、その時々に応じ、精神科、公衆衛生、内科、放射線科と、変化し続けており(結果として得難い学習ができているのも事実ですが)、チームメンバーと共通言語を理解し合うまでに時間がかかったりもします。日本一般のことで言えば、ストレスが大きな社会テーマであるように感じます。また、日常生活の中で、運動や栄養に関して間違った情報も流布されていますので、それらを整 理してあげるのに時間と手間がかかるのが現状ですし、まだ明確にわかっていないことも多いのが現実です。さらに、食材豊かで美味しいものに恵まれていますが、やや飽食の度が過ぎ、塩分、糖分、油分などにあまり留意されていないことも少し気になりま す。JSLM に関しては、日本語での LM の教科書がまだないこと、また生活習慣病対策の長い実績がありますので、既存団体とどこが同じでどこが異なるのかのポジショニングを明確にすること、また LM 自体が複数の分野をカバーしていますので、関連学会や 国立の研究所、大学とコラボレーションしていくことが課題となっています。また LM の特徴が、学際的な面と、臨床ですぐに使える知識を提供すること、また既存の社会組 織の枠を超えて人々の幸福と健康を考え協働する特質を含んでいるため、この新しいアプローチを理解し、共感を持っていただき、心を開いていただくのに少し時間がかかり ますが、ニーズと意義はとても高いと考えています。また LM の奥深さを Evidence- based Science としてプレゼン、レクチャーしていただく日本の人材へのリーチ、育成もまさにこれからです。

LM の6つのテーマ(運動、食事、ストレス、禁煙アルコール減、睡眠、コミュニティ)の中で、自分で強いと思う分野、また弱いと思う分野を教えてください。また ご自分で弱いと思う分野は、どのように勉強しているか教えてください。

心理学、Mind-Body Medicine が専攻でしたので、ストレスマネジメントや Lifestyle Modification、Community 育成が一番知識があり、馴染みも深いです。グループワークの経験も10 年以上になりました。睡眠に関して学ぶことはほとんどありませんでしたので、リハビリにいらっしゃる患者様を通じ現状を知り、とても大切な分野だと感じ、 慢性疾患と睡眠との関わり、特に comorbidity に関する新しい学術文献は、できるだけ 目を通すようにしています。また大学院中に、Food as Medicine を学んだり、栄養に対する態度に関わる研究に携わる機会はありましたが、具体的な Functional Nutrition に ついての知識はなかったので、関連学会に複数出席したり、ポスドクの研究ではマグネ シウムの研究に携わり、栄養学周辺の具体的な知識を補っています。

LM が日本に浸透した時に、どのようなメリットがあるのか、実現した時の未来像をお聞かせください。

早期の予防の概念が浸透し、健康に長生きできるだけでなく、社会全体での幸福度が拡充する。医療費クライシス、Reductionism の西洋医学の考え方の弱点へ歯止めをかけることができる。食べ物と環境の安全性の確保と、安定した適切な経済発展を実現。特に 食を中心とした行き過ぎた消費社会に歯止めをかけ、他の国の方々にご迷惑をかけない 形で日本の方々にあった食文化を維持できる。さらに、中・低所得国の健康の不平等を減らしていくことにも貢献できると思っています。

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この記事を書いた人

Japanese Society of Lifestyle Medicine (JSLM) は、⽶国の学会に集まった⽇本のNCDの改善に関⼼のある医療従 事者により2015年より準備が始まり、2017年に組織されました。JSLMは 医師、公衆衛⽣専⾨家、医療リサーチャー、医療政策に関わる専⾨家、医 療教育者、看護師、栄養⼠、ソーシャルワーカー、理学療法⼠、臨床⼼理 ⼠、ヘルスコーチ、⻭科医、薬剤師等、幅広い分野の専⾨家で組織されています。

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